• 2016/1/5

【第1回】途上国支援の仕事人に聞く。企業支援と途上国支援、似ているところと違うところ

3年前、今野は、ザンビアのODAの技術協力プロジェクトに参画していたときにアドバイザーとして派遣された大野さんと出会いました。大野さんは、農業開発を中心としたODAの仕事に従事したのち、自身で途上国開発専門のコンサルティング会社 JINを設立。JICAからも厚い信頼を受ける、百戦錬磨のODAコンサルタントです。

途上国支援という公益を目指した支援活動と、営利企業向けのコンサルティング、関わる姿勢として似ている部分もありながら、大きな違いもある。途上国支援とビジネスについて、お二人に話していただきました。

第1回は、途上国支援に必要とされる経営マインドの話
今野
今野

今日はよろしくお願いします。あらためましてですが、私が大野さんに会った頃は、日本で積んだコンサルティングの経験がなかなか使えそうだなという感覚を持っていて、ODAの世界にもそういった視点が必要だと思っていました。お会いした時に、大野さんにその考えを認めていただいたのを覚えています。

一方で、ビジネスの世界とか経営マインドにはないものが、パブリックセクターだからなのか国造りだからなのか、ODAの文脈には多分にあるだろうというのも肌感覚で感じました。それはおそらく大野さんもそうじゃないですか?

大野
大野さん

そうですね。そのお題で一番難しいのは、経営マインドというところと、それとは違う、何かウェットな形で語らないといけない部分が絶対出てくるところです。

企業の経営を測るのは明確に売上とか収益とかで、それが企業のひとつの価値の追求だと思うんです。一方、パブリックセクターの場合、そういう収益とかのスキームに合った事業と、半分福祉事業の世界、いわゆる税金で持っている人から取って、それをセーフティネットも含めて、どうにかして弱者に還元していく事業も必要と考えた時に、経営のマインドセットだけではハンドリングできない、効率とかだけでは言えないことが出てくると思うんです。

今野

なるほど。

大野

それを十分わかった上で、事業の効率性を見るための方法論、つまり、そのアプローチ自体がどのくらいのコストとアウトプットを出しているのかを、どこかで冷静に見ることが必要なんです。

ただ、勘違いしないで欲しいのは、私はビジネスライクにODAをやれと言っているのではないのです。ちゃんとしたマインドセットを持って、ODAのアプローチを十二分に活かして、その効率性を上げたりとか、インパクトを高めていこうということに対して、貪欲に追及していかなければならないということです。

泥臭い部分とキレキレの部分をもった人が融合して初めて、ODAオリジンのアプローチができると思うんです。だから、経営コンサルタントの人がいきなり行っても・・・

今野

ダメだと思うんですよね。

大野

そう、合わない。もうね、イライラすると思うんです。「なんでこれだけのオレの時間を、この1つのことを決めるためにだらだらと使っているのか。いま相手の話を、そうですねーあーですねーと聞いているが、なぜこの人は、議題の内容と全然違う話をしているのか」と。でも、全部飲みこんで聞かないといけない。

今後のODAを変える人達は、人間臭くそういうことができる一方で、冷静な計算もあり、その上でマネジメントの力もガツっと入った三位一体型の人間。そういう人を育てないといけないと思っている。

世界で通じるレベルになろうと思ったら、こういうマインドセットを持った人達を何十人もそろえていかないといけない。

今野

そうですね。私が関わったプロジェクトでは、専門技術を持った方がいて、広げる側を考える人がいて、それが機能した1つの成功モデルと言えると思ってます。

一方、専門家のスキルとかリーダーのスキルもあると思うんですが、案件そのものというのも大きかったのかなと。つまり、案件の中に入っている専門家ってすごく大事なんですが、企画段階の専門家も重要なんじゃないかなと。

大野

プロジェクトの建付けってとこですね。そこを言うと、わたしはこの業界にいるからわかるんですが、プロジェクトの建て付けを作る人って、最後の詰めは2週間でやるんです。非常にタイトな中で、相手と協議してやっていくので、内容を詰めるといってもこのぐらいが限界なのかなと。私自身、今も詳細策定調査という計画段階の調査に2つ関わっていて、次にそれらのプロジェクトの本格実施に関わりたいと思っているんですけど、やっぱり、最初の計画段階の人に大きな負荷を負わせるのは、厳しいなと思っている。

私がもし、他人が作り上げたプロジェクを受注した側だったら、一度、整理し直すと思うんです。これはこういう風にした方が良い、最初にもらった計画が良くなければ、どんどん状況に応じて変えていきましょう、と提案していく。それには根拠が要る、データが要る。そこをしっかり見せながら変えていくと思います。

データに基づいた思考といったビジネスマインドとODAに要求される人間性の両立を語る大野さん。次回は、実際に支援の現場での悩みへとテーマが移っていきます。

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大野 康雄

大野 康雄

投稿者プロフィール

青年海外協力隊(稲作)、JICAジュニア専門員、JICA業務調整員を経て、アイ・シー・ネット株式会社にて執行役員、事業部長、経営管理部長を歴任。2011年2月、株式会社JINを設立。岡山大学農学部卒業、米国コーネル大学大学院国際農業と農村開発コース修了。

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