• 2016/1/12

【第2回】途上国支援の仕事人に聞く。企業支援と途上国支援、似ているところと違うところ

3年前、今野は、ザンビアのODAの技術協力プロジェクトに参画していたときにアドバイザーとして派遣された大野さんと出会いました。大野さんは、農業開発を中心としたODAの仕事に従事したのち、自身で途上国開発専門のコンサルティング会社 JINを設立。JICAからも厚い信頼を受ける、百戦錬磨のODAコンサルタントです。

途上国支援という公益を目指した支援活動と、営利企業向けのコンサルティング、関わる姿勢として似ている部分もありながら、大きな違いもある。途上国支援とビジネスについて、お二人に話していただきました。

第2回は、支援する際の待つことの難しさの話
今野
今野

ODAのプロジェクトだと、例えば、農業技術の普及を目指す案件などで、RateをはじいてKPIを置いて指標化するということをやってしまって良いのかという葛藤がありました。公共サービスだし、セーフティネットなのに、数値化してしまってよいのかと。

例えば、農作物の収量をKPIとして置いてしまうと、1時間研修をしたときに、反応の良い人は収量が1.5倍になり、1番反応の悪い人はさっぱり変わらないということがどうしても起こります。公共サービスと考えると、やはり下の方の人を切れない。これがすごく難しいところだと思うんです。公共サービスとして数値化して管理する場合にどこまでしていいのか。大野さんを始めとした国際協力をやっている人間であれば当たり前に持っていることが抜け落ちるのではないか、ザンビアのプロジェクトでは、そのことの怖さが、正直ありました。

大野
大野さん

それは、マネジメントをする人間が、はっきり提示することですね。効率性を追うのであれば、起業家マインドのある人材を育てるということで、できない人は切らざるをえない。一方で、セーフティネット的な話であれば、農民の選定から整理する必要がある。何の基準を持って農民を選定するのか、できる農民とできない農民の特性がはっきりしているのであれば、それも踏まえて選ぶぐらいのつもりでいかないといけない。

今野

おっしゃるとおりですね。

農民をセグメンテーション-こういう言い方はしたくないですが-して、ロジカルにプランニングをしていく。マネジメントの決定を経て、そのことはできたとします。次に悩んだのは、カウンターパート、ODAの支援先当局の担当者の存在なんです。カウンターパートがついてこられない話をするのは良くないと思ったんです。

スカイライトの仕事をしていてもあるのですが、お客さんの仕事に立ちいって代わりに全部自分たちでやることもできます。ただ、自分たちが抜けたあとに作ったものが使われないとか、ムダになる、いうのはお客さんの成功につながらない。だから自分たちがすべてやるんじゃなくて、お客さん主体にスカイライトはお客さんと伴走しようと常々言われています。このマインドセットって途上国への技術協力の世界と合致するなと思ったので、だからぼくはザインビアのプロジェクトでも違和感なく動けたんです。

ただ、企業のプロジェクトと途上国への技術協力では、待ち方が違う気がするんです。日本でのコンサルティングの仕事だと、お金をもらっていて、その期間内でプロジェクトを成功させないといけないとなると、じっくり待つことはできない。一方で、途上国支援では期間が3年以上であることもあり、国を相手にした仕事でもあるので、短期的には多少アウトプットの質が下がったとしても、長い目でみればここは待つ方が良いのかなとより強く感じます。でもそうすると、さっきのセグメンテーションの話を自分たち主導でどこまでやってしまって良いのか。ここは悩んだというか、難しいなと思ったポイントです。

大野

そこは私も悩むところです。そこはね、同じプロジェクトに従事する専門家チームの中でしっかり話をした上で、グッと待たないといけない。ものすごくシャープなマインドセットがあるのにグッと耐えて待つのと、何となく待つのが国際協力の仕事だよねと言ってモワっと待つのとでは、価値が全然違う。安易に待てばいいと考えている専門家やコンサルタントを多く見受けますが、それはプロとしてはどうかと思います。たとえ後者でうまくいったように見えても、それは次やったら非常に危ういと思うのです。例えば、ザンビアだとうまくいったとしても、次にタイとかにいったらどうなるかは分からない。

データを見て、深堀してみて、このロジックの中でちょっと問題提起してみようというシャープな側面を持たず、ただ待っているだけではダメ。でも、そのバランスは難しいですよ。シャープになればなるほど、相手国の政府の役人などのカウンターパートには訳がわからなくなる。ついてこれなくなる。

今野

ついてこられないし、それで走っちゃうと「あ、コンサルさんがやってくれるんだ」となる。これは日本でもそうですし、ODAの世界でもそう。私が現地で出会ったヨーロッパの途上国開発のコンサルは、そういう風にやっていました。

大野

うん、良いポイントをついていますね。このODA業界の特殊性の1つです。企業向けコンサルもある程度そういう側面があるかもしれないけど、ODA事業ではもっと特殊なところであり、ここが職人技のポイントだと思うのです。

今野

少なくとも日本に帰ってきてからのスタイルは、待ち方を考えますね。やっぱりやっちゃいけないだろう、っていうところとか、そういうところはゆとりができて、

大野

懐が深くなった。

今野

そういうことだと思います。あくまでも程度の差だな、と。ザンビアの程度はやっぱり深い。日本の方が深くない(笑)。これは経験だし、日本のコンサルの仕事でもいろいろやっていけば多分でてくる幅だろうから、これはある種、企業向けコンサルと途上国開発コンサルの共通項と言ってもいいのかもしれない。

大野

確かにね。主体者に、どれだけ主体的に考えていただくか。その方法というか、タイミングも含めてね。小石を投げる方法とか。大きな石を投げては駄目だから、ちょこちょこと波紋を起こしてみる、みたいなね。その辺の妙は、私も途上国支援で大分鍛えられたと思う。人を見る力とかね。

それぞれの経験を通じて、ODA業界での途上国支援と企業向けのコンサルティングの共通点を語るふたり。次回は、そうはいっても違うODA業界の厳しい現状と大野さんがそれをどう考えているのかを伺います。

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大野 康雄

大野 康雄

投稿者プロフィール

青年海外協力隊(稲作)、JICAジュニア専門員、JICA業務調整員を経て、アイ・シー・ネット株式会社にて執行役員、事業部長、経営管理部長を歴任。2011年2月、株式会社JINを設立。岡山大学農学部卒業、米国コーネル大学大学院国際農業と農村開発コース修了。

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