• 2016/2/2

【第2回】持続可能なエネルギーで、今よりフラットでもっと平和な社会を作り出す

サステナジーは、東北を中心に持続可能な地域エネルギー事業を展開している会社。その事業によって実現したいこととして、次の4つを挙げられています。

  1. 新しいゲームのルール創出
  2. 現在の国の負債が限界に達したときのセーフティネットづくり
  3. 日本を世界のロールモデルに
  4. 世界のエネルギー市場960兆円を消す

これらのチャレンジングな目標に潜む想いや再生エネルギーの現状、目標実現に向けた方策について取締役の三木さんにお話を伺いました。聞き手は、スカイライトでエネルギー関連の案件に携わる斉藤が担当します。

第2回は、原油やガス、さまざまな再生エネルギーの現状の話
再生可能エネルギーって必要?
斉藤
斉藤

いままでのような工業発展、つまりエネルギー需要が増えていくことはなく、むしろ減るって考えると、再生可能エネルギーでもいけるんじゃないかという見方が優勢になる。でも、原油価格が落ち着いていれば、原発ゼロでも火力でやっていけて、再生可能エネルギーが増えなくてもいいんじゃないかっていう意見も出るような気がするんですが、どうでしょう?

三木
三木さん

いま、原油価格が下がっているのって、サウジアラビアの王様の意向によるものじゃないですか。これって、いつまで続くのかすごく不透明だと思ってるんですね。構造的に安定していなくて、人のさじ加減ひとつで変わるって、すごくリスク高いな、と。

斉藤

構造的にリスクが高いっていうのは、自分ではコントロールできず、遠くにあるものといえますね。石油は、自分ではコントロールできないし、しかもめちゃめちゃ遠くにある。

三木

そう、しかも危険な地域を運搬しなくちゃいけない。

斉藤

だから安保法案みたいなのも考えちゃったりする。

三木

気持ちはわかるんですよ。ホルムズ海峡とかの安全を守ろうと思ったら、集団的自衛権とかああいうことを言い出したくなる気持ちはわかる。でも、ケンカ売られたらケンカ買ってってやってたら終わらないし、勝てる保証もない。コストもすごくかかるから、それが平和への道、安全保障の道って言われると、ちょっと前時代過ぎないかと思ったりもします。

斉藤

エネルギーや食料は奪い合いになりやすいとすると、なるべく内側で需要を賄えるようにしたほうが良い、と。

三木

そうですね。コントロール可能なものを増やすって意味ではそうだと思う。

斉藤

もうひとつの、遠いって話だと、宇宙エレベーターみたいなものを作って、宇宙から電気を運ぶとかっていうのはナンセンス?

三木

あれはOK。本来地球に取り込めないエネルギーを持ってくるので、やり過ぎは良くないですけど。

斉藤

めっちゃ遠いですけど(笑)

三木

ただ、宇宙エレベーターを作るためにはカーボンナノチューブが必要なんです。でも、いま最長で作れるカーボンナノチューブって、56cmから70cmくらいなんですね。現代の技術じゃまだできないけど、いずれ何万キロってできるんじゃないかと思ってて。

斉藤

そうか、いま使ってるエネルギー源、水や石油やウランとかは、偏在しているから奪いに行く、あるいは金で買いにいくってパラダイムになるけど、自分のところでテクノロジーとかやり方を変えて、エネルギーが作れればそのパラダイムは相当変わるわけですよね。

最近の話で行くと、シェールガス。昔は単なる砂だと見向きもされなかったけど、技術が変われば使えるようになる。

三木

そうですね。でも、技術革新が起こっても、元々掘っていた井戸を破砕して絞り出すカスでしかないので、質は悪いし、1つの井戸から出てくる量少ないんですよね。なので、次々と井戸を変えていかないといけない。

あと、オイルはまだ良いんですけど、ガスってあまり運べないんですね。世界で生産される天然ガスは、その場所やエリアで7割ぐらい消費されているんです。輸出されているのって生産量の3割くらい、その内の3割を日本が輸入しているんです。だから全世界の生産量の10%ぐらいを日本が使っている。じゃあなぜ3割しか輸出されないかというと、液化して運ぶのが大変。まず液化するプラントを作って、戻すプラントを消費地で作って、この間の船とかも全部セットでプロジェクトファイナンスするんですよね。一発100億円以上かかるので、長期の20年契約とかでやるんですよ。

斉藤

それ、日本が一生懸命やってるじゃないですか。

三木

やってますね。でも、ほとんど日本だけですね。

ガスが出るところであれば、自分たちで使うか、パイプラインで送っちゃえ、と。だから、「出ないところは知らないよ」ってなるんだと思うんですよ、たぶん(笑)

再生可能エネルギーの可能性
斉藤

争わないエネルギー、つまり、偏在せず枯渇しないエネルギーをどうやって得ていくか、っていうのがサステナジーさんの事業テーマのひとつなんですね。そうすることが、安全保障とか戦争のない、貧困を生まない世界に近づく第一歩だと。

三木さんが考える争わないエネルギー、希少財にならないエネルギーって、再生エネルギー、太陽光とか風力とか水素系とかになるんですかね?

三木

はい。再生エネルギー中心、除く水素ですね。

斉藤

水素はダメ?技術的に難しい?

三木

技術的にというか、物理的とか科学的にも難しいです。水素ってすごく不安定なエネルギーなので、単体では存在しない。必ず何かから作らないといけないです。何からつくるの?って話ですね。

斉藤

世の中に普通にあるのは水の方ですからね。

三木

世の中で一番安い水素はおそらく鉄工所で作られる水素です。鉄工所の中で廃棄物として扱われているので、安く手に入る。でも社会インフラを支える程の量は出ないんです。それから保管がすごく大変。70メガパスカルとかでタンクに詰めて運ばないといけない。あと、水素を入れたボンベがすぐ腐食するらしいんですよ。爆発する温度帯の幅が広いというのもあって、保管が難しい。

1メガパスカルは、約10気圧。自転車のタイヤの圧力が7気圧なので、その100倍の圧力。
斉藤

でも、バラ色な感じで話をする人っていっぱいいますよね?

三木

水素社会への期待っていうのは、時代を経て何回か登場していて。

斉藤

人類の憧れなんだ(笑)

三木

鉄工所からパイプで引っ張って水素ステーションをつくるっていうのは、北九州とかの一部ではできるかもしれないけど、社会インフラとしては足りない。

斉藤

それ、偏在してるじゃないですか(笑)

三木

そうなんです。その次に安いのは石油から作る水素です。でも、だったら石油のまま使えばいい。

再エネが余るなら、そこから水素作ればいいってよく言われるんですが、水を電気分解して得られる水素って普通にやって18%ぐらいの変換効率しかない。最近はもうちょっと高いかも知れませんが。しかも、水素のままで使うわけじゃなく、また電気とか動力とかに戻して使うので、戻すときにまたロスが出る。

斉藤

変換するたびにどんどんなくなっていくわけですね。

じゃあ、水素はないとして、サステナジーさんでは風力はやってるんでしたっけ?

三木

やってないです。やってない理由は、風力は大資本が必要で、時間もかかるので、われわれみたいなベンチャーがチャレンジできるようなビジネスではないというところですね。

小型の風車は小資本でできるのではないかという話がありますが、風は地上表面に近づくにつれて速度が遅くなるんです。なので、安定して高い風を掴むためには、高いところに立てる必要があります。小さい風車を高いところに立てても発電量と設置コストのバランスで割に合わない。よく縦型とかなんとかレンズとかは効率が良いなんて話が出てきますが、結局は風が持っている運動エネルギーを電気に変換するという物理の法則は越えられないので、みんな一緒です。

斉藤

ポールにお金がかかるんだから、羽根もでかくないとコストが回収できない。

三木

そうそう。そうすると、1本6億とか10億、環境アセスメント含めて5年のプランだと、サステナジーのビジネスでは、まだないな、と。ゼネコンとか商社とか大会社がやればいいと思ってるけど、そうすると、サステナジーが成長する前に候補地は全部取られちゃう。

斉藤

再エネとしては有望だけど、参入は難しい。

三木

世界で一番安い再エネっていま風車なんですね。発電コストがkWhあたり4円くらいです、最安のところは。インドとか中国の巨大なウィンドファームとかでは、水力とか火力よりも圧倒的に安いんです。1/3ぐらいのコストで発電するので。

斉藤

大陸系のでかい国はどんどん風力を増やしていく。

三木

でしょうね。風力じゃないですが、ゴビ砂漠の半分に太陽光パネルを敷き詰めたら、世界中の電力がまかなえるって言われてますけどね。あと、地中海のアフリカ側の砂漠で太陽光を敷き詰めるって話もあるみたいです。総費用200兆円とかって話でしたが。できた電気を送るのには超高圧送電が必要で、ちょっと先のテクノロジーですね。

斉藤

サステナジーさんは、太陽光だけじゃなく、バイオマスもやられてますよね。バイオマスは、地域にある間伐材とかの木材を使って地産地消はしやすいけど、規模を大きくしようとすると途端に破綻すると聞いたことがあるんですが。

三木

木って元々持っているエネルギーが少ないので、遠くから運んでくるコストがかかったら割に合わないんですね。なるべく狭い範囲から集めて、木が持っているエネルギーを効率よく使うというのが必要。でも大型のものを作ることが多い理由は、出力が5,000kW以上の発電機じゃないとタービンの性能とかの関係ですごく効率が悪いから。でも、5,000kW以上のものだと、当然燃料がたくさん必要になる。どのくらいかというと、周囲100km圏内の材料を全部集めないと足りない。燃料が調達できなくなると、ヤシガラ使うとか稼働率下げるか、どっちかになってしまう。

斉藤

大型だと、日本でうまくいってるところはないらしいですね。

三木

木って、化学的なエネルギー、石油とか蓄電池とかと同じ状態のものを一回、一番低級な熱に変えて、沸騰させた蒸気タービンを回す動力にかえて、電気にするっていう変換じゃないですか。下がって上がってさらに変換ロスが加わって、っていう使い方をすると、木が持っているエネルギーの3割ぐらいしか電気エネルギーとして使えないんですね。残りの7割は低級な熱エネルギーに変わって使い道がないので、クーリングタワーを使って、空気中に捨てます。うちがやっているのは、化学的な状態の木を、同じく化学的な状態のガスにするんです。蒸し焼きにすると炭化水素がでてくるので、それを綺麗にして、ガスエンジンを回す。つまり、熱にするのではなく、化学的な状態のまま、ガソリンとかガスとかと同じ使い方で、エンジンの動力にして発電しているんですよ。その過程で当然、熱としてロスになる部分も出てくるので、その熱も回収して、近隣のホテルのお湯とかそういうのに使うと、木の持っているエネルギー全体の6割ぐらいは使える。そうすると採算性が上がって小型で回しても採算とれるようになるから、5,000kWなんて必要ない。しかも、近隣の木材で賄えて、かつ経済的に回せるっていうプラントが作れる、っていう考え方です。

斉藤

エネルギー消費って観点だと、生活するもしくはビジネスするときに、必ずしも電気じゃなくて良いですね。北の方だと、温泉や旅館とか熱は熱のままでもいいはず。そういう使い分けもある中での地産地消のエネルギーですよね。

三木

たぶん、東北とかだと使ってるエネルギーの5?6割くらいは熱ですよ。電気はそれほど使ってない。

斉藤

冬は特にね。石油ストーブを超える暖房器具ができたら、皆すぐ乗り換えそうな気がしますけどね。

三木

本当は、石油みたいな対流式よりは。薪ストーブの方があったかいんですけどね。輻射熱が出るんで。

次回は、いよいよサステナジーさんがどうやってエネルギー市場を消すというビジョンを実現しようとしているのかについて、みっちりお話を伺います。

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三木 浩

三木 浩

投稿者プロフィール

青山学院大学理工学部卒。
NTT系企業・外資大手半導体メーカーにおいてシステムエンジニアとして勤務。
その後、インターネットベンチャーにてネット関連の新規ビジネス立ち上げのコンサルティングに従事。
2001年よりアクセンチュア株式会社において、シニアマネージャーとして戦略コンサルティング、ITコンサルティング、業務改革等多岐に渡るプロジェクト統括を経て、2007年8月に経営戦略の構築から事業運営までを一貫して行う、コンサルティング会社を立ち上げて独立。2008年より自然エネルギー系の事業に参画。
2009年よりサステナジー創業時取締役として参画し、事業戦略や事業モデルの策定等を行っている。

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