• 2016/3/22

【第3回】自然体のリーダーシップについてもういちど話そう

チームビルディングジャパンはその名の通り、チームビルディングのための研修プログラムを提供しています。先日、代表の河村甚(じん)さんのコラム「チームビルディングの話をしよう」に田頭がゲストとして招かれ「自然体のリーダーシップ」というタイトルで対談をしました。今回は、対談したお二人がそのコラムを振り返りながら、あらためてリーダーシップについて考えてみようという企画です。

第3回 見せることによるリーダーシップの話
リーダーとはどんな存在?
田頭
田頭

ビジョンとかミッションを組織に浸透させて、みんなをやる気にさせるのがリーダーの資質とか言うよね。それと、チームメンバーがワークショップをしてボトムアップでそういうのが醸成されてくるっていうのと、じんちゃんはどっちが好き?

河村
河村さん

えーとですね。たぶん、リーダーっていうときには、人によっていろんな解釈があるよね。自分の中でのリーダーの理解って、人がたまたまついてくるかどうかみたいなところがある。日常の業務の中でも、例えばある課長がいるときに、その人がただ業務の責任者としているだけではなくて、その人が発信したものに対して、みんなが響いてついてくるような存在であるかどうか。そうじゃなければ、役割としてだけのリーダーで実際にはリーダーではないように思うかな。

田頭

『リーダーシップの旅』って本で、リーダーには3種類あるって出てくるね。任命されたリーダーと選挙で選ばれたリーダー、自然発生的なリーダーの3種類。

任命されたリーダーっていうのは「お前が課長だ!」みたいなやつで、自然発生的なリーダーは、確かバケツリレーの例が出ていた。火事を消すときに、バケツリレーしなきゃいけないんだけど、なんとなく自然とその場でリーダーシップを発揮して、勝手にみんながついていくっていう。

どれが良いとか悪いとかではないけど、価値観的にはなんとなく自然発生的なリーダーが良いっていうのがある。なんだけど、自然発生的なリーダーと任命されたリーダーとを一緒の文脈で語っちゃいかんっていう、確かそんな話だった。

河村

有りがちなのは、その任命されたリーダーに、その自然発生的リーダーのリーダーシップを求めちゃっているっていうところが問題点で、だからこの任命されたリーダー達が苦しんでいる、みたいなね。

田頭

課長部長とかね。

河村

そうそうそう。それでうちみたいな所に研修お願いしますって来るんだよね。うちの課長何とかしてくださいって。この人たちが多分一番困っているんだよね。期待されちゃっているけど、どうしようかと。

田頭

「この人についていきたいと思っていないし」みたいな。

河村

そうそうそうそう。

田頭

でもそりゃあそうだよね。誰かがこの人が良いと思っていても、俺は思っていねぇからって。会社から任命されただけだしね。

この人だったらついて行っても良いと思うから、リーダーシップがそこに発生する。リーダーとフォロワーの間に出てくるのがリーダーシップだから、リーダーシップはリーダーに帰属するものじゃなくて、関係性に帰属するものなんだよね。

河村

フォロワーがなければリーダーではない。

田頭

うん。だからその、自然発生的なリーダーみたいな役割をみんなが求めようとしても、それはね、やっぱり無理だよね。「お前、自然発生的なリーダーたれ!」って言われても。

河村

そもそもその発祥が不自然だし。

田頭

そうそうそう。そうだよね。

「自立せよ!」って言われてそれで自立したって、それは自立してることになるのかって言うのと同じだね。

ビジョンだけでは動けない
田頭

前の対談に戻るけど、このマインドマップの話は、FAJ入ったばっかりのときだったってのもあって、私にとってはエポックメイキングな話だったな。

「自然体のリーダーシップ」からの引用
(たがしー)もう1つあってさ。仲間内でオンラインでマインドマップを作ってた時のこと。最初はじんちゃん、あんまり書いてなかったんだよね。それが、ある程度形が見えてきたところで僕が現状こんな感じですってメーリングリストに流したら書き込み始めてさ。「今どういう状態か見せてくれたから書きたくなった。それがなかったら最後までやらなかったんじゃないか」って話してくれて。
その時に、何かを見せることでやる気になるってことがあるんだなって。今の状況をポンと出すだけで物事が進むってことがあるんだなって、教えてもらった。
田頭

「見せることでやる気になることがあるんだな」って書いてあるけど、まさにほんとにこれなんだよね。フォーラムの実行委員会のときとかでも、情報がぶわーって錯綜していると、動けなくなる人がいる。「いまどういう風になっているのか?」っていう問いすら出せなくなる人がいて、そんなときに「いまのステータスってこうなっています」っていうのを、スナップショットとしてシェアするだけで、随分助かったとか言われたんだよね。

河村

そうだよね。見せることで現状がわかって、わからないで行動できなかった人達が行動できるようになる。その切り取って見せるのがリーダーの役割っていうのはその通りだなと。それは、見せてもらうことでフォロワーが動き出すってわけだから、まさにリーダーの行動だよね。

田頭

役割として任命されちゃった人が、こういうことを意識することで、実はリーダーシップをとることができるみたいなのってあるんじゃないかな。ただ、割とこのスナップショットを見せるっていうのもスキルかなと思わなくもないけどね。

河村

いやスキルだと思うよ。スナップショットをとれない人たちがいるからね。

田頭

いるからね。やっぱり目の前のことに追われて、それがどうしても気になっちゃう。引いて見られないときは、スナップショットって切り取れなくて、全体像が示せない。そういう意味では、誰でもできることではないのかもしれないなぁ。整理して見せただけだよ、っていうことかもしれないけど、整理するっていうことが大切なことではある。

河村

整理できない人たちは、できないからね。

田頭

そうそうそう。本当にできないじゃない?できない人って。できないからダメとかではないんだけどね。

河村

整理できるんだけど、見せられないっていうのもあるかもしれないね。全体に対しての発信することに躊躇しちゃう、みたいなね。

田頭

かえって混乱させるのもあるね(笑)

良かれと思ってやっているんだろうけど、かえってやることが分からなくなったり。

河村

あらためて考えてみると、チームを作っていく上で、現状認識の共有をするようになるだけで随分と上手くいくようになるというのはあるね。

田頭

例えば、「あ、こっちの方に行きたい」とかって思ったとしても、そこまでの道が全く霧に隠れていて、そこを一歩踏み出すと落とし穴になっているかもしれないっていう中で、一歩踏み出せる人と踏み出せない人といる。「落ちたら落ちたで何とかするから」っていう人たちと「落ちたら痛いからもうちょっと霧が晴れないと一歩進めない」って人たち。

河村

あー、そうだね。

田頭

落ちてもいいやっていう人はビジョンだけ示すと、割とガーっと行きやすい。そうじゃない人は、もう少し目の前を見せて「大丈夫、大丈夫、足一歩出しても地面あるから」って感じにしないとダメで。そのためには現状を見せる、今立っている位置ってここだよねって教えてあげる必要がある。

河村

まさにその通り。ビジョンだけでは動けないっていうのは実はけっこうある。うちのプログラムとかセミナーとかでよく言うのは、3つを共有していないとうまく始められない、と。その3つって言うのは、1つ目は現状認識。いまどこにいるのか、どういう状態なのか。次がビジョンとかあるべき姿。どこに行きたいのか。経路検索で例えると、スタートがここでゴールがここの住所ってし指定すると検索ができる。その間を結ぶベクトルみたいなのが、3つ目。そこには、こうあるべきなのにいまはそうではない違和感とか、そこに行きたいっていう想いとか、そのために何をすればいいのかっていう手順とかタスクリストとかがある。この3つを共有していかないと実は動けない。共有すると動けるようになるから、だから話し合うことが大切なんですって言ったりするんですよ。

田頭

行く先と今と、この間の想いとか、なるほど。3つ目のベクトルみたいなのってもうちょっと聞きたいな。

河村

つまり、いまどこにいて、どこに行くかっていうのが分かると、「そこに行きたいよね」っていう気持ちの部分が生まれる。行くためには「こうしなきゃ」っていう風なものも生まれてくる。「こうしなきゃ」の中には、全体で共有しておくべき、ちっちゃな小ゴールみたいなものもある。例えば、経路検索をしても道順がいくつか出たりする。時間が短いのはこのルートだけど、でもこっちは料金が安いからこっちで行こうかとか、でも時間ないからこの自動車検索のやつでタクって行った方がお金かかるけど、良いよねとか。そういう「どれが良いか」みたいなのを共有しておく。そうやって共有して選択をしていくときに、前に話した「らしさ」が登場してくる。

田頭

なるほどねぇ。

河村

でもね、みんなビジョンがどうとか、リーダーがビジョンを見せなきゃとか話すんだけど、実は意外と現状が共有されていないのがわかっていない。いま、赤坂に行こうとしているんだけど、品川にいるのか東京にいるのか分かっていない、みたいな。そもそも「いまどこ?」ってのが分からないから、歩き出せもしない。

田頭

でも、どういう観点で共有すると「品川にいる」といえるのかも問題だよね。例えば、自分たちの強みとか弱みとか、置かれている環境とか、お客さんにこんなこと言われているとか。一部の人だけはそのお客さんの声を聞こえているけど、他の人は聞いていないと、切迫感もちょっと違ってきちゃう。どこまでどう共有すると「いま確かに品川だ」っていう風に集約されていくか、っていうのはちょっと難しいよね。

河村

難しい。セミナーとかで言うと、シンプルに思われちゃいがちだけど、これ一回ポンっとやったから上手くいくとかではないんだよね。つまり、現状認識を共有したつもりで動き始めても、何か違うみたいなことが起こる。実はいろいろなレイヤーになっていて、その時点でできるレベル感でまずやっていくんだけど、組織の状態によってはさらに深めるとかが必要。

プログラムの中でやるのは、ざっくりなんだよね。例えば「いま職場で感じてることや起こってることってどんなこと?」みたいなテーマでワールドカフェで話してもらうと、それぞれ内側に持っていたものが出てくる。それが共有されると、会社の現状ってこうだなっていう安心感みたいなのができて、ざっくり共有することができる。最初はまずざっくりしたところからなんだよね。

田頭

そういう意味じゃ、まずは、大体なんだけど、田町―品川ぐらいの距離とかね。(笑)

河村

あ、そうそうそう。(笑)

田頭

もうちょっと話聞くと、もうちょっと品川寄りだったかな、とかね。

河村

新駅できたら、そこがいちばん近いんだけどな、とかね。

田頭

日々個別に仕事していると、品川にいた人達がワーっとばらけていく感じ。で、放っておくと、ばらけきっちゃう。たまに現状認識の共有とかすると、また品川に戻ってきて、また、ばらけていく。ばらけていくこと自体はもう仕方がないので、いかにばらけないように、定期的にリーダーがスナップショットを投げてみるとか、アクティビティやってお互いの現状合わせていくみたいなのが、必要だね。

河村

そうそうそう。

田頭

あと10分(笑) チェックアウトしますか?

チェックアウトしていると10分経つよ。(笑)

河村

経つね。(笑) 

終わらないチェックアウトになるとかね。

田頭

前回のときも思ったんだけどさ。対談するのって、しゃべっている時は気持ちいいんだけど、これで良かったのかって。これ読み手にとって、本当に面白いのかなって本当に思う。じんちゃんとやった記事も、人によって好き嫌いはあると思うしさ、僕は自分で読みかえすと、あぁこんな話した!って当然あるからさ、思いだせて楽しいんだけど、いやどうなんだろうなぁって感じ。

河村

でもねぇ、この間の対談については、直接反響を聴いたケースについては、面白かった、とか緩いねぇとか。(笑)

数日前に法政で授業を一コマやってきたんだけど、すごくメルマガ読んでくれている法政のスポーツ心理学の先生が「すごく良かった、たがしーさんとのやつ面白い」って言ってた。

田頭

あ、ほんと!そうやって言ってもらうとちょっと安心するね。我々がほんと好き勝手に喋っているのも、面白いと思ってくれる人が1人いるっていうのは良いですね。じゃあ今回のやつも1人面白いって思ってくれたら良いかな。そうか、1人でもいるとね、やった甲斐があるんだよな。だからそういう意味では、面白さってけっこう大切なんだよね。

河村

そうだよね。

この間も話したかもしれないんだけど、面白い話し合いみたいな場って血がめぐるんだよね。話終ってからの血がめぐった感、ちょっとこうなんかジムに行ってきた感ぐらいの感じがあってすごく気持ちいいし、そういう機会がね、ちょいちょいあるとやっぱり嬉しいよね。

田頭

確かに。

では、今日はありがとうございました。お疲れ様でした。

河村

いやーありがとうございました。今日も面白かった。

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河村 甚

河村 甚

投稿者プロフィール

株式会社チームビルディングジャパン代表取締役
本気の体験と本音の対話で組織を育てるファシリテーター。1998年、アメリカに本部を置く国際リーダーシッププログラムUp with Peopleに参加。同プログラムにてミーティングファシリテーションや、異文化コミュニケーション、チームビルディングプログラムの経験を重ねる。プログラム修了後、同プログラムスタッフとして日本/北米にて勤務。
帰国後、イベント制作会社にて主に海外インセンティブイベントを制作。
2006年チームビルディングジャパンを設立。様々な企業のチームビルディングを専門会社として支援。日本でのチームビルディングの普及と発展に力を注ぐ。

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