• 2016/5/17

【第2回】グローバルで働き続けるために本当に大切なことは、チャレンジを楽しむこと

スパイスアップ・ジャパンを率いる豊田さんは、東南アジアやインドを中心にミッション:グローバルというグローバル人材育成のための海外研修を提供しています。近年、日本企業もグローバルな事業展開が進み、その事業を担う人材の育成が喫緊の課題となっていますが、グローバル環境で働くために大事なことについて、スカイライトの人材戦略担当で、豊田さんの大学の後輩でもある松川が伺いました。

第2回 グローバル環境に出て行くための自信の身に付け方
場慣れは、一回経験すれば十分
松川
松川

スキルとかじゃなくて場馴れが大事って話でいくと、そういう場馴れをしていない人はいるじゃないですか、たくさん。ミッション:グローバルを受けにくる人が、場馴れを繰り返し繰り返しやっていけば、もう一段上に上がっていけるのかな。何がそのブレイクスルーのキッカケになるんだろう?

豊田
豊田さん

場慣れは大事だけど、海外とかグローバルな環境で仕事をする時に一番重要なのが場馴れなのかっていうと、そんなことはない。一番必要なのはそもそも仕事ができることなわけです。場馴れが一番大切だったら、学生で世界一周してきたんですよって奴が一番強くなるけど、絶対そんなことはない。あと、英語が一番重要なんだったら、ぼくらはアメリカ人の5歳の男の子にだって負けちゃう。でも絶対仕事では負けない。だから一番重要なのは仕事ができること。

日本のそれなりの企業で働いている人たちはみんな優秀だと思うんですよ。地頭は良いし、ちゃんとした大学出ていて、そこで勉強しているかしてないかは知らないけど、ちゃんと会社に入って、ちゃんと仕事をしていると。そんな中で当然仕事のやり方とか、その分野でのスキルとか知識がついている。それが大前提として必要。だから場馴れよりも重要なのは、仕事ができることだとおれは思ってる。

場馴れなんてそんなの簡単だよ。一回行けばさ。例えば、アメリカに10年住んでましたってやつとおれは話ができる。住んだことないけど、旅行で行ったことある。例えば、ロサンゼルスに行きました。話はできるでしょ。でもゼロだと空気感もなんもわからない。場慣れって、一回でも十分だと思う。

松川

そのゼロイチがまずすごく大事だと。

豊田

ゼロイチだと思うよ、やっぱり。

松川

このミッション:グローバルもそういう意味で言うと、

豊田

ゼロイチをさせてるだけなの。

松川

だよね。だからこれ、5回セットで5回やりましょうって話じゃなくて、ほんとにゼロイチの、1回目。ピン!ってフラグ立つときに上質な経験をしておきましょうってやつなんだ。

豊田

そうそう、だと思う。だから、これたった一週間の研修なんですよ。で、何やるかっていったら、スキルとか知識にまったくフォーカスしない、あるいは、語学力アップにもフォーカスしてなくて、向こうに行って、日本語で課題を出すんですよ。どういう課題かって言うと、例えば、食品メーカーから派遣されたとすれば、カンボジア人の食に対する意識を調査して、50人以上からナマの声を聞いて、それをベースに分析して発表してくださいと。そういうことを朝の9時にお願いして、4時までに戻ってこいとか言うわけ。

松川

じゃ、街中でヒアリングする?

豊田

そう。例えば、カンボジア、プノンペン。行ったことある?

松川

カンボジアはない。

豊田

ないでしょ?ほとんどの人が行ったことないんですよ。

で、そんな初めての場所プノンペンに着いた次の日、ぼくが朝9時に「今日の課題を発表します」って。「今日は、プノンペンの街に出て、50人以上のカンボジア人、しかも年代別、いろんな人の話を聞いて、食に対する意識調査をして、分析して発表してください。4時に待ってます。解散」と。で、10時に解散して、4時まで6時間しかないんですよ。昼飯の時間入れて。どこに行けばいいかもわからない、誰に聞けばいいのかも分かんない、何を聞けばいいかもわからないっていうのをやる。もう頭フル回転して「何の質問する?」とか「でもちゃんと分析しなきゃいけないってことは、どっかに食に対する意識のデータないかな?」って言って調べて「日本のなんかのデータと比較してこういうのを作ろう」っていう仮説を作ったうえで行って。

松川

そうだね、そうなるね。

豊田

これ途中で違ったとしたら、また変えなきゃならない。しかも、英語が通じるのかどうかもわからない。で、4時までに戻ってこいと。

松川

それ、毎日毎日違う題目でやるの?

豊田

違う、違うんだ。

松川

マジかぁ。

豊田

すっごい大変なの。頭も心も身体もメッチャクチャ汗かいて。でも、5日間それやると、なんかおれ出来たって気になるんだよね。やっちゃった、みたいな。

松川

部屋にこもってワークショップやるようなやつって世の中たくさんあるし、ぼく、そっちをイメージしてたんですけど、大違いだね。

豊田

そうそうそう。だから、結局、ぼくらは環境の提供をしてる。イメージとしてはたった一人で行ったことのないカンボジアの出張で「おまえひとりでプノンペン行ってこれやってこい」って言われる感じ。もちろん、自分の今やってる仕事だからできるかもしれないけど、始めての地で知り合いもいなくて、じゃどうしようかって言って、もうとにかく頭と心と身体と汗かきながら、3つのタスクを終えて、日本に帰ってくる。そういうのの疑似体験みたいな感じ。

松川

なるほど。

場慣れができなくなっている現実
豊田

なぜ、いまそういうことが必要かというと、20年前、30年前あるいは50年前、例えば、ぼくが小さいころ、おやじの仕事でアルゼンチンに行ったころ。そのころは、グローバル・ビジネスやってる人材が少なかったから、みんなエイヤーって行くしかなかったの。で、それが修業の場だったんですね。20代に、みんな試行錯誤しながら、失敗重ねながらやって来た。ところが、いまそれから20年、30年経て、いまの大企業の状態って、もう既にできる人たちが向こうに張り付いている。でもその人たちが帰ってきたときに行く人たちがいないんですよ。なぜなら彼らは経験を積めないの。経験ある人たちがやっちゃってるから。昔だったら、エイヤーって行ってそれからだったんだけど、エイヤーやる前に、ビジネスが向こうで回っちゃってるから。

松川

失敗も許されなくなっちゃってるんだよね。

豊田

許されなくなってる。だから、次の人たちが行けないんですよ。

松川

なるほどねー。

豊田

だから、いまはプール人材をどう育てるかっていうのが喫緊の課題になってて、なので、現地の、現法にトレーニーとして行かせたりするんだけど、それもゲストみたいになっちゃう。

松川

オフィスツアーして返ってくるだけ。

豊田

そう。仕事が失敗できないから、出張もデキる人が行くんですよ。駐在から帰ってきた人たちとか。だから、日本にいる人たちは海外の仕事に関してはいつまでもジュニアのままっていうのが現状としてある。

あともうひとつの昔との違いは、昔は日本のGDPも大きくて内需があったから、海外から安く仕入れて日本で売るとか、海外で安く作らせて日本で売るというのが主流。当時、グローバル事業展開は、やりたいやつ、できるやつが行ってやってた。だけど、いまは日本のマーケットが小さくなっているから、やりたくない人も、とにかく外に行ってマーケットを開拓しなきゃいけない。

昔はやりたいやつが、野武士みたいなやつが売りに行ってた。ところがいまは、野武士じゃない人たちが、日本はマーケットがシュリンクしているから、会社としてとにかく行ってマーケット広げなきゃっていう状態がある。

松川

なるほどー。結構年の上の人もいるの?

豊田

いるね。インドで研修やったときに、同い年の人もきてた。「まさか、インドに来るとは思わなかったです」って。

松川

それもすごいっていうか、しんどいなそれ。

豊田

しんどいよ、45歳になっていきなりインド来て、英語もあまり自信ないのに、課題与えられてやって、大変だと思う。

でも、やってみたら、できるんだよね。なぜなら、インドのイメージは悪いんだけど、話しかけてみると、意外と人は優しい。それがインドじゃなくても、韓国人だって、タイ人だって、わかんないと怖さが先立つけど、実際は片言の英語で Excuse me って言って、I have questions. とかやってると、向こうがわ~って近づいきて、こーだあーだってやってくれる。「あれ、なんか意外と優しいな」とか「意外と片言でも、This, this とか言って通じるな」ってことに気付いていく。それが、場慣れ。結局、日本にいたらその場がないから、どんどんどんどん怖くなってくる。

松川

なるほどなぁ。

豊田

いま、ぼくの会社のアドバイザーになってる早稲田大学のトランスナショナルHRM研究所の白木先生はグローバル人材マネジメントが専門なんだけど、彼は、この研修で培うもので一番大きな得られものは、自信だっていうんですよね。海外旅行行った後に英語勉強したいなっていうモチベーションは、帰ってしばらくすると下がっていく。でも、やれたっていう自信は下がらないですよ。だから、これはやれたっていう自信は絶対下がらないっていう研修になってて。そのための無茶振りなんだよね。ひとは無茶ぶりでもやれって言われたら、やるんだよね。やんなきゃってなったら、やるんだ。

松川

昔みたいに試行錯誤で失敗を許されてたジェネレーションが、いまも、やるべきことをやっている環境下で、日本でプールされてるけど、次を背負っていかなきゃいけない人たちを、どう鍛えていくか。

豊田

そうそう、それがもともとの課題感。

松川

重いテーマですよね。結構。

海外でのサバイバルが出来ない環境になっている
豊田

25歳で独立してから15年間は、主に海外留学のサポートしてたけど、昔は留学が力を付けるために有効な手段ではあったと思う。昔は携帯電話がなかったし、ネットもなかった。だから1980年代とかだと海外に留学したら、もう向こうに向き合ってサバイブするしかなかった。ぼくの時代でも、電話はあるけど国際電話だから高い。もう電話あんまりかけないでねって言われて、1カ月に1回かけて、それ以外は手紙書きますぐらいの感じ。20年前まではそうだったから、向こうに向き合うしかなかった。

ところが今はフェースブックでアップする、インスタでアップする、ツイッターでアップする、あるいはLINEで電話する。だから片足を日本に置いたままなんですよ。全然サバイブじゃない。何かあったら地図で見ようと、グーグルマップで全部調べちゃう。何もサバイバルしない。

松川

そうだね、全然違う。

豊田

でしょう。テクノロジーの発達によって野生の勘が失われてるっていうか、野生の力が失われつつある。同じ1年留学行くでも、20年前に留学行ったやつと、今留学行ったやつでは力の付きが違うのは、場と環境が違うからなんだよね。

松川

そうだね。

豊田

あとは現地の学校も教育ビジネスなんで、例えばアメリカの学校とかでも、この学校には日本人のスタッフいて、何かあったらインターナショナルスチューデントオフィスっていうのがあって、「私たちがサポートするから何も心配しないでください」「安心して留学してください」と。昔は日本人のスタッフもいない、インターナショナルスチューデントオフィスもない。もう自分で何とかするしかないみたいな感じだった。

そのホスピタリティー、サービスっていうのと、もう一つはテクノロジーの発達、この二つによって留学では力が付かなくなってるっていうのを留学事業を続けながら思い始めたんですよ。

松川

なるほどねー

豊田

留学がこじんまりしたものになってるし、力付いてないような気がするなっていうタイミングと、いろんな会社の人から、今新興国マーケット攻めたいんだけど、何かインドだとかベトナムに行きたくないっていう人が多いんだよねっていう話があって、留学事業をやめて、こっちに切り替えたんですよね。それはすっごいよかった。

松川

たしかにね。留学って行っても、ちょっと日本のどっかの地方に行ってるぐらいな感覚だよね。

豊田

うん、そんな感覚なの、本当に。

松川

人にも話しかけず、フツーに生活してたら、買い物行ってスーパーで食い物買って。多少食い物が違うとかくらい。

豊田

そうそう。英語話せなくたっていいからね。

松川

通貨が円じゃなくてドルなぐらいな違いだね。

豊田

部屋にこもってさ、ずっと日本とチャットしてたっていいし、日本の番組YouTubeで見てたっていいし、完全にたまたま海外にいるだけで、部屋の中で自分の周り日本とかわらないみたいなのあるから。

だからこそ、無理矢理にでも外に出るキッカケを作ることが、より一層、大事になるんだよね。

日本企業における海外での活動の場馴れの必要性から、ネットが普及した弊害が指摘されました。次回は、そんな豊田さんがつくる組織のかたちの話になります。

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豊田 圭一

豊田 圭一

投稿者プロフィール

株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役/CEO
上智大学経済学部を卒業後、清水建設株式会社で約3年の勤務後に独立。15年以上にわたり 留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ・海外研修事業に携わる。その他、複数の起業を経て、現在、東南アジアやインドでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。インドのバンガロールにて英語学校Spiceup Academyも運営。
著書は『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『引きずらない人は知っている打たれ強くなる思考術』など全14冊。 早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員、NPO留学協会の副理事長なども務める。

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