• 2016/6/14

【第1回】既存の枠を越えて動き出したくなる組織の作り方

英治出版代表の原田さんとスカイライトの代表羽物は前職の同期。羽物は英治出版の社外取締役をやっており、二人はトライアスロン仲間でもあります。出版社とコンサルティング会社という違った業界に属しながらも、同時期に起業をし、社員の自主性を重んじるスタイルで会社を経営しています。あらためて、お二人の経営スタイルについて、「人を動かす」というテーマで対談していただきました。

第1回 同じ想いを共有できる人たちの集め方
経営理念を言葉にして伝えること
羽物
羽物

テーマは「人を動かす」ね。

でも、「人を動かす」ってどうかな?

原田
原田さん

うん、あんまり「人を動かす」って感覚は持ってないかもね。

羽物

そうなんだよね。

原田

動かすって言うと、こちらから力を加えて能動的にすることになるけど、そうすると相手が受動的って感じがする。動かすって表現だと、自分のやり方とは合わないかなぁ。

英治出版は「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」と考えているんだけど、社員の夢も含め誰かの夢を応援したいわけだよね。そうすると、もともと夢を持って動いている人たちを支援するのが仕事であって、その人たちが立ち止まってたらそもそも応援しづらい。そういう意味では、動かすという感じとはだいぶ違うかな。

羽物

それはぼくも感覚的に同じところがあって、スカイライトができたときって、ぼくは33歳で、役員陣6人いたけど、だいたい30ちょっとくらい。一緒に入りそうだったメンバーは20代後半くらいで、みんな年が近かった。それぞれ力もある人たちが集まってくれてたんで、スカイライトの代表(取締役)をすることになったときに最初に思ったのは、上から指示するんじゃなくて後押しするって感じだったね。

おれはそうだったけど原田んとこは、最初はひとりで始めて、だんだんと人が増えたんだよね。

原田

そんなに増えてないけど(笑)

羽物

人を増やす中で、どうやって自分の感覚を伝えていった?

原田

やっぱり「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」とか、そういう風に表現したのは大きな力になったと思うね。ただ、それを念仏のように唱えさせるのは嫌なんで、ぼくがそれを大事にたくさん使った。何かのメッセージを書くとか、講演するときとかに、そのメッセージを多く発信するようにした。クレドとか行動指針とかを壁に貼って毎日朝礼で読ませるとか、そういうことは好きじゃないので、ぼく自身が大切だと思っているメッセージだし、英治出版の経営信念の一番確たるものとして自分でたくさん繰り返し使うようにしたっていう。

羽物

それは外に向けての発信?

原田

外もそうだね。中でその全フレーズを言うことはないかもしれないけど、外に発信しているから中の人も当然触れる機会が多くなる。あと、例えば、企画会議とかで「これって本質的に誰を応援しているプロジェクトなんだっけ?」とか質問するみたいな。「応援」ってキーワードだけで「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」が思い浮かぶことで、自分たちがそれを成功の近道だと思っているっていう考え方が刷り込まれていく。そんな狙いもあって、自分が多く使うようにした。

そっちはどう?そういう理念の浸透って意識した?

羽物

スカイライトっていう社名が決まる前に経営理念が決まったんだよね。「顧客の成功を創造し、顧客と成功体験を共有する」っていうのが。その経緯はよく思い出せないんだけど、最初の役員6人で何をやりたいかっていうのを話そうって話していったら、その言葉になった。

2000年の頃だからね。そのときはチェンジ・ザ・ワールドとかキーワードとしてね、ほら、バブルに浮かれてたわけですよ(笑)

原田

ネットバブルのころだ。

羽物

「ビジョナリー・カンパニー2」とか出てきて、何をするかじゃなくて誰と一緒にやるかが大事だ、なんてお互い言い合って。2001年に初めて合宿したときには、そういう標語というか、「扉は開かれてる」とかそんな言葉を5つくらい作ったりした。で、その後も、グラムコさんに頼んでブランディング・プロジェクトをやったときは、「ともに未来に、一歩ずつ着実に」ってブランドメッセージを作ったし、社員アンケートから整理して価値観とか行動精神とか言われているもの、我々が大事にしたいよねって思っている言葉を作った。なんか、ちょいちょい、継続的にっていうか、断続的にそういうことはしてるね。

原田

そういうプロセスを大切にしてるってことだよね。

羽物

うん。いまはあんまり言わなくても、「スカイライトっぽい」っていうので社内はわりと通じちゃうくらいにはなっているので、敢えてひとつずつ言わなくてもみたいな感じはあるな。

原田

スカイライトでは、そういうプロセスで繰り返し繰り返し違う言葉に置き換えた結果、腑に落ちる人が増えたのかもね。

でも、「スカイライトっぽい」って言っているのが、もうちょっと会社が大きくなると伝わりづらくなってくることもあるんじゃないかな。

羽物

中じゃなくて、外に対して何をやっている会社かを説明するときは難しい。目に見える商品はないし、サービスも定型じゃなくて非定型なんで説明できない。対お客さんもあるけど、対採用でも、どういうことを大事にしている会社なのかって伝えるのが大事だよね。だから、採用向けには、コンサルっぽく、5Fと5Cって整理して出してたりするんだけど。

最初の仲間は「怒り」を共有して集める
原田

英治出版はもうちょっと感情に訴えているといえるかな。明治大学の野田稔教授に教わったんだけど、起業家が最初の仲間を見つけるときにどうやって惹きつけるか?お金も実績も、なんにもない起業家が「おれと一緒にやろうよ」って言っても「はぁ?」みたいな感じなんだけど、でも一緒にやろうっていう人がでる瞬間がある。これを調べてみると、結構多くのケースで「怒り」があったと。

羽物

へー

原田

主には「義憤」、公に対して「こんなん間違っているよね、だったらおれたちでやろうぜ」みたいな。

羽物

なるほど

原田

って考えてみると、和田さんを惹きつけたときは「絶版にしない出版社作ろう」ってぼくが言ってた気がする。はっきりは覚えていないけど。

和田さんは、英治出版の創業期の取締役編集長で、編集者、小説家。現在はガイア・オペレーションズ代表。
原田

起業したのは1999年で、もう老舗の出版社はいくらでもあった。過去の出版物は活版印刷などの時代を経たものだから、絶版になってたものが多すぎて、買えないものが多かった。まだアマゾンは日本に来てなかったから、そこまで顕著に見えたわけじゃないんだけど。出版界って文化産業だから再販価格制度で定価を出版社が決められるようになっているのに、世の中に絶版だとか、品切れ重版未定みたいな本が多すぎて、それで途切れちゃう文化って文化じゃないじゃんって。もうそんな産業は文化産業じゃなくていいんじゃないかくらいに思って、ぼくらは絶版にしない出版社を作ろうと。そんな思いに和田さんがシンクロしてくれたんだよね。ま、お酒の相性が良かったっていうのが本当かもしれないけど。でも、そこもあったんじゃないかなって思うんだよね。

再販価格は生産者が小売に対して価格の維持を指示することで、書籍等の著作物と一部の商品を除き、独占禁止法で禁止されている。著作物を例外とした理由は判明していないが、文化の保護を図るとされる説が有力となっている。
羽物

なるほど。スカイライトも、そういうとこちょっとある。創業メンバーは6人ともアクセンチュアにいたんだけど、大きいクライアント向けの大きい案件、何百人も入るようなプロジェクトをやりなさいってのが強くなりすぎちゃって。「いや、そうじゃないんじゃないの?」と。われわれの力をもっと他に活かせるんじゃないかと,言い方によってはちょっと不遜に聞こえるんだけど、そういう感覚はみんな持ってたんだよね。お客さんと一緒に成功するのを味わいたくて、ぼくらはやってるんだし、そこに何かクリエイティブなものを持ち込みたいし、それがさっきの経営理念に結びついてる。

スタートがそうで、経営理念がそうだったんで、そういうのをやりたいっていう人を採用していくということで、選んでいったのかなっていうのはあるんだよね。価値観の統合っていうのは、その選択するところで随分効いているのかな、と。

英治出版の社員になりたくて履歴書を送ると不合格になる
原田

そうだね。それはもう英治出版の選考方法とか顕著だね。

最初のうちは、ご縁を信じて、要するに、何の実績もない小さな会社に入りたいっていう奇特な人といかにしたら一緒に働けるかっていうことを考えてやってたけれどね。だんだんと変えていって、いまは採用募集するようになって、でも履歴書とか送ると不合格で、エッセイだけを出してくださいになった。エッセイがくると、全社員で読んで、この人と一緒に働きたいかとか、この人と会ってみたいかとか思う人にマルをつけてもらう。それで、マルの多い人から面接に呼ぶというスタイルにした。そうするとね、それだけでだいたい9割方の人がフィルターかかっちゃって。前回なんか、100人近い応募があって、面接に呼んだ人は10何人だと思うんだよね。だから、80何人の人は履歴書も見ず、男か女かも分からず(笑)

羽物

そっかそっか、エッセイだけだもんね。でも、エッセイは読んでるんだよね。

原田

エッセイは読んでます。で、さよならしちゃってるんだよね。でも、そのエッセイから滲む人格だとか、なんか、そういう嗅覚を信じて、採用してるんで。でも、反対にね、先に履歴書見ちゃうと、ぼくらの嗅覚が鈍る可能性もある。

羽物

バイアスは絶対かかるんだよね、履歴書って。こういうことをやってましたって書かれると、だったらできるはずだ、とか。

原田

こういうことをやりたいと思ってるときに、こういうことをやってましたって言う人がくると、この人がいいって、ファンクションで思いがちじゃない。

羽物

思っちゃう思っちゃう。

原田

ね。だけど、誰でもちょっとやればさ、そういう役割をこなせるように学習もできるわけだし。むしろ、さっき言ってた誰とやるのかが大切だとするならばね、一定のラーニングタイムをとればさ、そっちの方が大切だと思って、そういうやり方にした。でも、結果的にさ、英治出版の社員の学歴って高いよね。学歴とか職歴とかね。

羽物

あー、そうね。そうね。そうだと思う、それは。

原田

不思議だね。学歴見なかったのにね。しかも、はじめに見てたら、学歴職歴高すぎて、かえって怪しすぎて採れないみたいな。

羽物

履歴書なしって、バイアスがかからないんだね。

原田

かからないですよ。

羽物

面白いね。

原田

それはそのプロセスがなせる技で、新しく入ろうとする人はエッセイ書くにあたって、当然自分の想いで書くんだろうけど、その企業についても下調べするじゃないですか。だから、本気でこの会社入りたいって思った人は、ある程度理念に寄り添える。というか、そういう人が集まってくるし、こちらもそれに寄り添うっていうか、共感できるものが多いと思う人を選ぶ傾向にあるんだろうな。

羽物

そうだよね。応募しようと思ったらホームページ見るし、出版社だったら、どんな本出してますかって見るもんね。こういうラインナップで出している出版社なんだって理解したうえで応募するわけだもんね。

原田

そうそう、そういうところもある。見えやすいっていうのはあるんだろうね。

羽物

そっか、ちゃんと理解してエッセイ書いている方が、受ける側も共感できるエッセイだったりするわけだ。

原田

そうだろうね。

創業期からを振り返って、経営理念に共感できる人たちが集まる仕組みに行き着いた英治出版。次回は、自ら動く人が出てくる組織はどんなものかというお話です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
原田 英治

原田 英治

投稿者プロフィール

英治出版株式会社 代表取締役
慶応大学法学部法律学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。数年勤務の後、退職し、家業である一世印刷株式会社に入社する。取締役、代表取締役副社長を務めた後、一世印刷株式会社を退職し、有限会社原田英治事務所を設立。2000年に現在の英治出版株式会社に改組し、代表取締役に就任。「ブックファンド」という新しい出版ビジネスモデルを考案し、事業展開を行っている。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る