• 2016/6/21

【第2回】既存の枠を越えて動き出したくなる組織の作り方

英治出版の代表の原田さんとスカイライトの代表羽物は前職の同期。羽物は英治出版の社外取締役をやっており、二人はトライアスロン仲間でもあります。出版社とコンサルティング会社という違った業界に属しながらも、同時期に起業をし、社員の自主性を重んじるスタイルで会社を経営しています。あらためて、お二人の経営スタイルについて、「人を動かす」というテーマで対談していただきました。

第2回 動いている人が出てくる組織の秘訣
原田
原田さん

絶版にしない出版社から次には、著者を応援する出版社っていうコンセプトに移行していった。絶版にしてたら著者は応援しづらいもんね。著者をいちばん応援できるのは編集のプロセス。売るところですごく応援できるかっていうのは、結果次第なので、わからない。ここは計画できない。でも少なくとも編集はスキルなんで、著者のメッセージを磨くだとか、メッセージをクリアにするとか絞るとか、ここは出版社がスキルで応援しやすいところかなと思ってる。

羽物
羽物

他の出版社では結構、書いたまま出すみたいなところが多くて、ほんとにこれ伝えたいの何?まで言ってくれないとこの方が多い感じがする。ほんとはね、演出家のはずなんだよ、編集者って。

原田

そうだよね。

羽物

もうちょっと演者の振りを直すくらいのことはしてもいいはずなのにね。ま、そこまでコストかけたら割にあわないのかなぁみたいな。

原田

絶版にしない出版社だと、未来にも読者がいるから、もうちょっと長期のサイクルでいいから回収していこうぜっていうところが、英治出版としては、結果的に良かったかなと思うけどね。

既刊本の売上が新刊本の売上高を超えるようになったことが、安定のひとつの大きなところで、それはやっぱり、絶版にしないことによって、少しずつ少しずつちょろちょろ売れる本が溜まっていったっていうかね。

羽物

売上的には安定していく。

原田

そうだね。

絶版にしない出版社ということを好きだと思ってくれる人もいれば、著者を応援する出版社っていうのをいいなぁと思ってくれる人もいる。それは社内にもね。その根底にあるのが「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する」。そういうのが、どっかのところで腑に落ちてきてくれてるのかな。

書籍出版はマスメディアじゃなくて、書店店頭がメディアですから。ぼくらはそのコンテンツを作り出す著者を応援する仕事をしている。だからメディアとして多くの読者を意識するより、ワン・ディグリーの経営を大切にしている。そこから広がっていくイメージ。だから著者が使いやすい本作りとか、著者が伝えたい相手にひとりずつ伝えていくような本作りをしようよ、みたいな理念がね、少しずつ伝わっていってるのかなぁ。

羽物

なるほど。

ワン・ディグリーは、一次の隔たりの意味で直接知っている人のこと。この言い方の元は、シックス・ディグリーズ・オブ・セパレーション(Six Degrees of Separation、六次の隔たり)という、6人の知り合いを仲介していくと世界中の人とつながっているという仮説による。
羽物

ちょっと話し戻すと、スカイライトが起業チャレンジとか翻訳出版とかやり続けていった結果、社員からこういうのやりたいって出てくるのが最近は増えてきたんだよね。サッカーチームのヴェルディと提携してお金出してって、あれは入社3年目の社員がおれにメールくれたのがきっかけでスタートしてる。ほかのやつもわりと若手社員からやりたいんだけどって出てくることが増えてきてる。だから、コンサルティングで稼ぎながらも、他の新しいことやっていこうっていうのも、いますごくいいバランスで出来てるような感じはしている。

「なにか新しいこと思いつきなさい」って言って思いついたっていうよりは、「新しいことを言い出して実際やってる、だから言い出していいんだ」っていうのが浸透してきた結果、起こりだしたのかなって感じがする。自分がそういうことをやることによって、他人に影響を与えてその人が動いた、ってことでは人を動かしてるのかもしれないけれど、言い出してもらったのを応援しているって感覚のほうが自分は強いかな。

原田

自分たちが考え方を改めるのに、ある程度の時間がかかるんだよね。スカイライトでは「何をするかより誰とするかが大事だ」って言ってたのだとすると、スカイライトとシナジーのある仕事だとかっていう「何をするか」で判断すべきじゃなくて、「誰がやるか」を大事にすべきなんだ、本当は。もしそこに心底信奉するならね。だけど、どうもさ、コンサルティング会社もそうだろうし、自分も含め、コンサルティング会社にいたような人間は「いまの本業とのシナジーは?」とか「何をやるか」を評価してて「あいつがやりたいって言ってんだからいいじゃん」っていう話になかなかならないんだよね。

羽物

そう。本業とのシナジーってことでいうと、ウチは経営コンサルティングをやってるじゃない。で、経営ってなんでもあるんだよね。

原田

とも言えるよね。

羽物

っていうのがあって。だって、サッカーチームだって経営してるしさぁ。人のマネジメントからサッカーをビジネスと捉えるとエンタメ系だったりするわけで、そういうビジネスやってるわけだから、それ経営だよね?

原田

理屈をつけようと思えばつく。

羽物

出版も同じようなところあるじゃん。

原田

うん、出版も同じようなところあるんだけど。

羽物

どんなものでも出版するテーマってあるんだよね。

原田

理屈はつくはずなのに、なかなかそれが出てこなかったり、自分たちが決定できなかったことが、すごく面白おかしいというか。

羽物

たしかに、シナジーがないじゃないですかって呪縛のように言われることはやっぱりあるね。本業とのシナジーはって言われても「いやいや、結局、経営コンサルなんだから、なんか活きるよね、これ経験することで」って。

原田

てゆーか、あいつがやろうって言ってんだから。「誰とやるかが大事」だから、こういう機会に遭遇したんじゃんって言えばよかったのかもしれないけど(笑)

羽物

まあ、たしかにね。

やりたいって意思をもってやることは、すごくいいことで、やっぱり、やらされ仕事よりやりたい仕事のほうが絶対やりたいから、そういうやりたいのを真剣にやりきらせるってことがあると、その人も伸びるし、その人がうまくやりたいことをうまく応援したみたいなことで。

原田

そうだよね、ほんとはね。

羽物

それでいいはずなんだよね。

原田

なんだけどね。経営者として考えなきゃいけないのは、そこにお金を使っても経営的に大丈夫かどうか。

羽物

金勘定はしなきゃいけない。それはね。経営者ですから。

原田

そうそう。で、その金勘定し始めると、もっと早くからプラスになって儲かるようなシナジーがなければ、だとか、そういう話になりがちなんだろうなぁ、とは思うけどね。

羽物

あんまりそれやってもなぁ。そんな風に思っちゃうのはなんでだろうね?

原田

でも金勘定以外に大切にしているものがあるからこそ、やっぱりその、人を動かしてるかどうか分からないけど、動いている人たちが出る組織っていうのになってるんじゃないかな、と。

羽物

あんまり短期で刈取りたいっていうようなことは、やってないよね。って自分で言うのもなんだけど。

終身雇用は悪くなかった
原田

視点は長期的な方がいいとは思うんで、ぼくはね。最近なんか、また考えなおさなきゃいけないなと思うのは、日本の終身雇用制ってそんなに悪かったっけ?ってこと。終身雇用が悪かったのか、年功序列が悪かったのか。終身雇用のデメリットってなんだっけ?みたいなね。

羽物

年功序列で能力よりも年で給料が決まったり、立場が決まったりするのがいけないと思う。若くてもっとこの人活躍させたほうがいいんじゃないのって人が、押し込められちゃうのはいけないとこだと思うけど。

原田

終身雇用とセットに考えなくても良かったなと思うよね。

羽物

いいよね、別に。終身雇用じゃなくたって、年功序列の会社だったら同じこと起こるんじゃないの。ま、転職しやすいかどうかとか、転職するのがあたりまえの社会かどうかっていう。

原田

いや、それでね。面白いなと思うんだけど、多くの会社がいまだに年功序列だと思うんだよ。給料がほとんどの場合、勤続年数が長いほうが多かったりして。だから、年功序列を止めたかったはずなのに、年功序列を残し、終身雇用は別に止めなくても良かったかもしれないのに、終身雇用があんまりなくなって人材の流動性が高まったって、なんかすごく矛盾してるなぁと思って。

羽物

うん

原田

ほとんどの会社の給料って、やっぱりね、なんだかんだいって年功序列だと思うんだよ。

羽物

ま、年上の方がたくさんもらいますってなってる。

原田

年上の方がたくさんもらいがちだし、さらに、そこの会社での勤続が長いほうが多い。引き抜きで来たエリートの転職組以外は。

羽物

ライフネットの出口さんなんかは「定年制を止めれば実力で測るようになるのだ」って言っていて、それは一理あるかなぁと。

原田

そうそうそう、ま、それで変わるかどうか分かんないけど、経営者も、社員もそうだけど、やっぱり給料に対するメンタルモデルを改めて行かないと。さっきの事業開発の話もそうかもしれないけど、自分たちですぐシナジーとか収益性とか言い出してしまう。いやいや、本来は誰とやるか誰がやるかが大事だって言ってたにもかかわらず、そうならない。もちろん、給料も、年功序列は嫌だっていってたにもかかわらず、実は全然それが続いちゃってる。でも、自分も毎年上がらないと不満だったりして。

羽物

うーん。なるほど。

原田

結構、これはね、面白いなぁと思って。定年制はなくして、80歳くらいまではね、いいかなと思うんだよね。

羽物

そう、いまからだと、70歳はあたりまえで、80歳ぐらいまで働く人がいていいんじゃないのって思ってる。だって、それなりに貢献できることがあるんだったら、それなりに見合った給料もらって見合った働き方すればいいじゃん。

原田

そうそう。おれも何歳で、英治出版の社長って役職をどうするとか、去るのかとか考えなきゃいけないと思うけど、でも同時に、時給1000円くらいでも役に立てることがあるならとも思う。もしかしたら、英治出版が出してきた本や歴史に関しては、おれがいちばん知ってるかもしれないじゃない。

羽物

あー、そうそう。語り部として全国回りますっていうのでもいいわけじゃんね。

そういう循環型人事みたいな感じになるのかもしれないけど、あっていいんじゃねーかなと思う。結局、人間の考え方次第かなみたいな気がするんだよね。

結局は人間の考え方次第。自分たちでも気づかないうちに「あたりまえ」と思いこんでいることは意外に多いのかもしれません。次回は、そういったメンタルモデルをどう壊していくかについて話していきます。

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原田 英治

原田 英治

投稿者プロフィール

英治出版株式会社 代表取締役
慶応大学法学部法律学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。数年勤務の後、退職し、家業である一世印刷株式会社に入社する。取締役、代表取締役副社長を務めた後、一世印刷株式会社を退職し、有限会社原田英治事務所を設立。2000年に現在の英治出版株式会社に改組し、代表取締役に就任。「ブックファンド」という新しい出版ビジネスモデルを考案し、事業展開を行っている。

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