• 2016/6/28

【第3回】既存の枠を越えて動き出したくなる組織の作り方

英治出版の代表の原田さんとスカイライトの代表羽物は前職の同期。羽物は英治出版の社外取締役をやっており、二人はトライアスロン仲間でもあります。出版社とコンサルティング会社という違った業界に属しながらも、同時期に起業をし、社員の自主性を重んじるスタイルで会社を経営しています。あらためて、お二人の経営スタイルについて、「人を動かす」というテーマで対談していただきました。

第3回 メンタルモデルの壊し方
制度でメンタルモデルを壊す
原田
原田さん

もっといろんなことに挑戦することによって、みんなのメンタルモデル、思い込みを壊していって、動きのエネルギー、想像力を活性化させたいな。ある会社では有給休暇を他の誰かにあげることができるらしいんだ。「有給休暇ってのは何かあったときのために使うものだ」をもとにしてるってことなんだけど。

羽物
羽物

何かあった人にはあげなさい、と。

原田

そうそう。どういう風に仕組み化されたか分からないけど、コンセプトとして非常にいいなぁ、と思って。誰かにあげられる有給休暇って。人々の固定観念を外す上で、とても面白い。面白いと言えば、カヤックのサイコロ給とかね。

英治出版でも期末賞与はどういう分配にするのかって、経営者が決めるんじゃなくて、社員間で決める。今後、決め方は進化させなきゃいけないかもしれないけど、でも、社員間でチームへの貢献を評価して決めていくっていうような考え方。そういう風に給料を決めていくことで、自分なりの給料とは何かも考えてもらうきっかけを作りたいな。なんかそういう促しは必要だよね。

羽物

そうね、それは分かるな。スカイライトでいうと、ゼミを自由にできますとか、研修はいくらまで自由で、申請したらできますよみたいなこととか、シニアマネジャー以上って飲み代いくらまで、むしろ、いまのプロジェクトじゃない人と飲みなさいみたいなことをやってたりとか。

原田

結構使われる?それ

羽物

人によるんだ。人によってはそれをすごく積極的に利用する人もいて、でも、人によっては目先の仕事をとにかくやるって人もいて、それも含めて自由だっていう感じにはしてるんだけど。まあ、見聞を広めてもらったほうがいいんだけど、無理やり広めても広まんないんで。

原田

そりゃそうだ。

羽物

やっぱり、視野が狭いところで視野にないもの見せても見えないから。

原田

そりゃそうだよ。

羽物

最近、海外でビジネスできるかって調査してきますっていう的な出張も増えてきたんだよね。海外行くぞ行くぞって言ってたら、みんなだんだんその気になってきたっていう現れだと思うんだけど。行けじゃなくて、誰々とミーティングしてくるんで、ここ行きたいです、みたいなこと。14年度15年度くらいでずいぶん増えてきた。

動くことがコンフォート・ゾーンになる
原田

でも、行動を促していると、そういうのをいいと思う人が入ってくるだろうし、そうするとみんな感化されてね。ロンドンでのブックフェアにおれが行ったときに、同行社員がHub Tokyoに頼んでくれて、ウェストミンスターのHubに訪問をさせてもらったんだけど、すごく面白かった。歓迎されたし。どうやって運営されているとか現場視察できて、良かったなぁと。今回出張する社員は翻訳出版する本の著者とあってくるとかね。もうブックフェアに行くだけじゃない。

羽物

「そういうのをやっていい会社なんだ」っていうのと「そういうのをやる会社なんだ」っていうのと、ちょっとレベル感が違って、「やる会社なんだ」ってなると行動に埋め込まれている感じがするね。

原田

そうそう。そこを意識付けると行動に埋め込まれていく。それに対して、出張してもいいよくらいだと、旅行みたいで公私混同になるんじゃないかとか、自分たちを制御しちゃう固定観念もあるじゃない。それを、壊すようなことして、排除してあげれば、制御するんじゃなくて率先してやるようにもなる。そうなることを意識してやるように考えてるかな。

羽物

原田んとこみてると、海外のブックフェア行けって業務命令で、わりと強制的っぽく行かせているから、やっぱりそういうところに行くのが当たり前なのである、行く会社なのであるってのがだいぶ刷り込まれてる。そっから、それにかこつけて、ここも行くのもいいんじゃないのって、プラスアルファは自分で選んで、みたいな。

新入社員が入ると必ず、次のブックフェアで誰それさんと一緒に行くっていうのをアレンジしちゃうんだよね。行っていいんだじゃなくて、行くもんなんだっていうのが当たり前になってる。

原田

新入社員入ってくるとすぐのブックフェアに行くからね。4月入社だったら、4月中旬にはもうロンドンだから。

羽物

そうやっちゃってるから、そこがあたりまえのレベルになってる。

人を動かすの中でも、あたりまえのレベルになっちゃうと、動かされるどころか動かなきゃいけないんで。

原田

あと、動くことが、コンフォートゾーンになるんだよね。人間って、コンフォートゾーンに戻ろうとするんだろうね。だから、動かないことが前提だと動かなくなるよね。

羽物

動くことが前提だと、そこがコンフォートゾーンになるから、そこからスタートだもんね、またね。あたりまえのレベルを変えることによって、動き方がやっぱり変わるんじゃないかな。

原田

そういう仕向け方だよね。そうなんだよね。だから、ここの5階借りるのだってさ、最初は異論もあったと思うんだけど、借りちゃえばさ。

英治出版のあるビルの5Fは、英治出版のイベントスペース(EIJI PRESS Lab)として利用されている。
羽物

まあね。借りたら、もう、借りてるのがあたりまえのことになるし。

原田

ってことになるし。やっぱり年間百何十回も使ってもらえたり、また普段は出版社は本を並べないので、自社スペースの本の並べ方とかなんとかって言って、新しい刺激にもなるからさ。やっぱり、そういう意味では、環境を変えちゃうと変わるっていうのはあるよね。

羽物

オフィスの引越の効果って昔は全然信じてなくって「何が変わるんだ?」と思ってたけど、スカイライトが3年前に引っ越ししたときに「あ、変わるんだ」って思った。「すげー変わるんだ」と思った。あたりまえのベースが変わるんだよね。いいところと悪いところとあるんだけど。いい面は、移転もしていろいろ変わる会社なんだというのがあたりまえのベースになったのが、大きかったかなと。悪い面は、ちょっときれいなところにいるのがあたりまえみたいになっちゃうと、もう戻れない。

原田

今年は社食作ろうかな。ヤフーの社食ってさ、社内にないんだよ。歩いて5分のところにあるんだって。隠れ家なのかな。それいいなと思って。あと、農林水産省の社食って行列ができて、いろんな人が来て食うんだって。有名なんだよね。その2つのコンセプトを合わせると、みんなが使える、だけど、隠れ家の社食というブックカフェがあったらいいんじゃないかと。

羽物

なるほど。

原田

結構、儲かるんじゃないかと思って。この5階でさ、年間100回以上もイベントされてて、この近くに英治出版の隠れ家のちょっと飲めるところあるなら、2次会に使ってくれたり、英治出版の社員はまあ、社食だし、割安なら行くよね。そういう隠れ家社食計画を立てようかなと。

羽物

こういうアイデアは出てくるよね。原田先生はね。

コンフォートゾーンを設定して、そこになんとかして押し上げる。それをみんながあたりまえだと思っちゃえば、自分がやらなくてもみんなが動き出すっていう。

原田

事業開発とかは、新しい計画や制度を作って、コンフォートゾーンを押し上げなきゃいけないことなのかもね。

羽物

次のコンフォートゾーンがこっちにあるんだよ。

後継者に交代するということ
原田

そうするとね、新しい時代にはちゃんとリーダーを交代しないと行けないんだね。でも、その人をどうやって育ててるかってことが大事なんだろうね。それが、うまくいかないってこともあるよね。

羽物

あるんじゃないかなぁ。

原田

そこはすごく難しくて。うちの父親の会社をつごうとしたけど、結果的に、ぼくはしばらく勤めて辞めた。でも、おじいさんが創業して父親が継いだ会社のスピリットっていうのは英治出版にあると思ってるんだよね。でも、スピリットは一緒だと思っていても、マネジメントは変化したりするから。むしろ、年数が経つにつれて、スピリットとマネジメント離れてませんかみたいな話も出てくる。そのときには退けばいいんだけど、「どうやってスピリットを共有した人に次を渡すことができるのか」っていうのと、「スピリットを共有した人だからといってマネジメントスタイルは違う」ってことをどう認識するのかっていうのは、結構難しいよね。

羽物

そうだね。

原田

自分がやってたルールを廃止したりするわけだよね。「えー、それはこういう意味で大事なんだよ」と言いたくなるね。

羽物

でも、おれは渡したら渡したでもう何にも言わないかなと思うけど。お互い、初代社長なわけじゃない?

原田

そう、だから、言わないでいられたら偉いなぁ、と(笑)おれ自身はね、言わないようにしたいとは思うよ。でも「ここの会社のルールおかしいよね」とか言って、「あ、じゃもう売れない本はいらないから全部捨てよ、在庫多すぎちゃってるからこんな本捨てよ捨てよ」とか言われて「えー、絶版にしないっていうのは大事なルールだったんだよー」みたいな(笑)

だから、スピリットとマネジメント、起こる事象ををどうやって自分で整理するかはほんと難しいな、と思って。

羽物

たぶん、自分の性格上、全部おいて、もうあとは関わんないと思うんだよね。

原田

会社に来ない?

羽物

会社との関わりはない。アドバイザーやってくれって言われたら、アドバイザーはやるかもしれないけど、基本は何もやらないっていうか、指示はしないし。自分が思うことは言うかもしれないけど、採用されなくても、そうなんだねって言って。

原田

それ、難しいなぁ。

羽物

自分の性格上そうだと思う。

原田

でも、言ったことが影響を与えないと。

羽物

でも、責任取れないじゃん。

原田

責任はとれない。

羽物

そっから先、責任取るのは、あなた2代目なんで、その責任取れるやり方をしてくださいと。

「こういうのは大事にしたいって集まった人たちなんで、それは大事にしなきゃいけないよね」みたいなことは言うかもしれないけど、そのやり方はどうなのかは自分の責任なんだからっていう風にわりと突き放すと思う。自分は。

原田

いや、それがベストだと思う。そうすると、あんまり来ない方がほんとはいいってことなんだろうね。

羽物

他の人に「変わっちゃいましたね」って言われても「代変わりましたからね」って。

原田

そう言えるのがいいね。

羽物

自分が好き勝手なことができるように、自由度を持てるようにしておきたいってのはあるな。

「人を動かす」というテーマの全否定から入った対談でしたが、結果的には、お二人がどう人を動かす状況を作り出しているかについて話していただけた気がします。作られたメンタルモデルをどう壊していくのか、それはすなわち枠を越えるためのお二人自身の挑戦ともいえるかもしれません。

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原田 英治

原田 英治

投稿者プロフィール

英治出版株式会社 代表取締役
慶応大学法学部法律学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。数年勤務の後、退職し、家業である一世印刷株式会社に入社する。取締役、代表取締役副社長を務めた後、一世印刷株式会社を退職し、有限会社原田英治事務所を設立。2000年に現在の英治出版株式会社に改組し、代表取締役に就任。「ブックファンド」という新しい出版ビジネスモデルを考案し、事業展開を行っている。

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