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古くて新しいABC(活動基準原価計算)

第3回 ABCで業務の何が「見える」のか

表計算ソフトで簡単に集計分析できるABC

前回では、ABCの情報収集方法について述べた。今回は、収集された情報をどう整理・分析して業務の実態を把握するのか、という点について触れたい。

地道な方法で収集されたABCの情報は、Excelなどの表計算のファイルに大分類−中分類−小分類−細分類という構造で整理される。これを「ABCリスト」と呼ぶ。このうち、細分類単位で「単価」「1回あたり時間」「回数」が設定され、それらをかけあわせて「ABCのコスト」が算出される。前回の記事に明らかにしたように、細分類とは一挙手一投足であり、単価・1回あたり時間・回数がユニークな単位で定義される。このため、ABCリストは通常、Excel上に数多くの「行」で構成され、大分類・中分類・小分類・細分類・単価・1回あたり時間・回数・活動の総時間(1回あたり時間×回数)・ABCコストがそれぞれ「列」として横に並ぶ。

細分類の数(=ABCリストの行数)は、業種や職種によって異なる。比較的定型的な作業をしている職種では活動の種類も少ないので、1人あたり100行から200行程度で済む。それらの活動細分類では1回あたりの時間×回数の値が大きくなる。一方、営業や企画といった職種では活動細分類単体における1回あたりの時間×回数の値は小さくなるが、その分活動の種類が多岐にわたることが多い。このため、1人あたりの細分類数は500行を超えるケースもある。ABCではこのように、定型的・非定型的にかかわらず、業務であればデータとして整理できる。ABCリスト全体の行数は、調査範囲の広さにもよるが、たいてい数千〜数万にわたるものとなる。

そのため、縦横に並んだ表計算データを1行ずつ見ても全体像を把握することは難しい。そこで、ABCの分析はExcelのピボットテーブルのような集計機能を用いて集計し、全体的な活動の総時間とコストの偏りを把握することから始める。この方法により、たとえば大分類ごとのコストとそれぞれの配分割合の実態が簡単に把握できる。コストの多い大分類を発見したら、中分類、小分類と細かく掘り下げて、どの活動がコストにインパクトを与えているかを導きだすのだ。

仮に大分類が営業であれば、ターゲティングにいくら、資料作成にいくら、アポ取りにいくら、実際に顧客に接するのにいくらのコストがかかるのか、一目瞭然となる。コストの配分が人員の配分と異なれば、そこには何らかの無理・歪みがあることもわかる。改善すべきポイントはこのようにして絞り込んでいくことができる。

ABCプロジェクトの現場では、情報収集が終わると以上のような作業を行い、中間報告で経営陣に報告する。細かいパワーポイントの資料はほとんど必要ない。整理されたExcelをプロジェクタで映し出し、その場でピボットテーブルやフィルタ機能で操作し、経営陣の要望に応えてデモすることが最も好評である。数万行の生のデータの中から拾い出していく作業を、経営陣が自分自身の目で見ることは、現場感を追体験して、現場と問題意識を共有するうえでとても効果的である。

活動のタグ:分析の切り口

ところで、活動の構造である大・中・小・細分類の情報だけでABCリストを構成することは実は少ない。プロジェクトの目的・経営陣の問題意識をあらかじめ確認したうえで、活動構造とは別の「タグ」をABCリストにつけていく作業を行うことが多いのである。活動の「タグ」は、ピラミッド構造である大・中・小・細分類とは別の次元・体系で活動の属性を定義していく。

よく使われるものとして「活動タイプ」がある。「活動タイプ」は、その細分類がどのような活動であるかを示すタグである。たとえば、「移動」「資料作成」「紙作業」「PC作業」「連絡・相談」…などという活動の性質を、細分類ひとつひとつに設定していく。

ほかにも、「活動相手先」というタグがある。これは、その活動細分類が誰に対して行われているのかを示すタグである。たとえば、「顧客」「上司」「部下」「社内の他部門」「同僚」などのように設定される。

活動の「必要スキル」というタグもある。「Aレベル」=マニュアルさえあればその日に入社した者でも遂行可能な細分類、「Bレベル」=マニュアルを読み、上司のスーパーバイズがあれば遂行可能な細分類、「Cレベル」=マニュアル化できない非定形業務であるが、入社1年未満の経験でも遂行可能な細分類…というように定義される。

これらの活動のタグは、ABCリストの「列」の右側に、任意に追加されていく。すべての細分類に対して設定されるので、タグをひとつ増やすと数千〜数万ある細分類を再度チェックしていく作業が発生するが、活動の全体像を「見える化」するうえでは欠かせない。

活動のタグも合わせてピボットテーブルで集計分析をすると、「大分類=営業で、活動タイプ=資料作成、かつ必要スキル=A,Bのコストが、営業のうちどの程度の割合を占めるのか」などという細かい条件で判明する。たとえば、ある大手通信会社のケースでは、法人営業部門の「活動相手先=顧客」の活動が5%以下であった。「上司」や「社内の他部門」との連絡・調整が多く、真に顧客と接する機会を失っていたのである。もちろん経営陣は大きな衝撃を受けていた。

このような分析は、ABCを使わなくともアンケートなどである程度は実施可能である。しかし、数千〜数万の一挙手一投足・活動細分類から成るABCリストがその根拠となると、その信憑性は非常に高い。また、原因となる活動を細分類単位で突き止めて、単価・1回あたり時間・回数の何が良いのか、良くないのかということまで判明する手法はABCだけである。実際に何をどう改善すれば会社が良くなるのか、その答えを導きだすためには、ここまで精緻な分析が必要であり、精緻であるからこそ経営陣から一社員まで、全員の現状認識の共有が可能になるのだ。

さて、あなたの会社・部門をこのような手法で「見える化」すると、どのような実態が数値で明らかになるだろうか?

筆者について

佐藤幸作

慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。国内生命保険会社、外資系コンサルティング会社を経て、2005年にスカイライト コンサルティングに入社。 活動基準原価計算を活用した組織の生産性向上を主要テーマとして、製造・流通・金融・官公庁等各分野へのコンサルティングを手がける。2008年よりサンクトペテルブルク・ヴォストーチヌィ大学(ロシア連邦)客員教授を兼務。

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